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「人にはたくさんの土地がいるか」

レフ・トルストイの民話を北御門二郎さんが翻訳した。
トルストイも北御門さんも農業を営み土地からできた作物で生活をした。
北御門さんの生き方が翻訳に反映されていると思う。
民話は姉妹がお茶を飲みながら自慢話をするところから始まる。
姉は商家に嫁ぎぜいたくな暮らしをしている。妹は農家に嫁ぎ他と競争することもなく平穏に暮らしていた。
妹の夫パホームはもっと土地があったらたくさん作物を育て楽な生活ができるのにと思う。
パホームは苦労しながら自分の土地を手に入れ生活は少しずつ楽になっていく。ところが段々欲が出てきて、1日かけて自分が歩いた分を千デシャティナで分けてくれるという話にのる。
できる限りの広い土地を手に入れようと飲まず食わず歩き出す。
欲が出てきてもっともっと広い土地を手に入れようと歩き続けた。
日の入りまで歩き続けたが力尽きて死んでしまう。
パホームに残されたのは、お墓とわずかな土地だった。
土(つち)が土地に変わり、工場(こうば)が工場(こうじょう)になり、百姓が農業になり、人間の欲は際限がなくなった。
「起きて半畳寝て一畳」というが、そうはできないのが人間の性である。
金欲・名誉欲・権限欲・権力欲も身の丈に応じたものがちょうどいい。
頭ではわかっていてもブレーキをかけるのは至難である。
そこを少しでもブレーキをかけて生きてゆきたい。