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副島賢和さん第17回日本子ども学会学術集会特別講演より「お母さんには言わないでね」より。

『小学4年生の男の子の話です。彼は頭に病気があったのですが、手術が終わって退院が近づき、学校に通う準備が始まりました。
 家族の希望で彼には病名が告げられていませんでした。でも病棟のスタッフは、家族を説得して彼に病名を伝えることはできないかと考えました。
 彼は頭に手術の痕があるため帽子を被っています。学校に戻ったら他の子どもたちから「なんでずっと帽子を被ってるの?」と尋ねられるかもしれません。
 何より、彼自身に「自分はちゃんと病気と向き合って克服しているんだ」ということをわかってほしかったのです。
 私は彼の病室に行って「退院が決まってよかったね。でもさ、なにか心配なこととか、お医者さんに聞きたいことがあったら教えて」と尋ねました。すると彼は、ゲームをやっている手を止めてこう言いました。「先生、ぼく、脳腫瘍でしょう?」と。
 「どうしてそう思ったの?」と聞いたら、「ゲーム機で調べた」と教えてくれました。彼はゲーム機のインターネット機能を利用して、自分に使われている薬の名前から病名を調べたんです。
 続けて彼は、「お願い!お母さんには言わないでね」と言いました。「ネットを使ったことが分かったら、ゲーム機を取り上げられるからかな」と思いましたが、「ぼくが脳腫瘍だって分かったら、お母さんが悲しむでしょう」と言ったんです。ずっとそんなことを思いながら、彼は治療に向き合ってきたんだなと思いました。』小学4年生の子どもが、相手のことを慮ることができる。驚きと感動を覚えた。この子の優しさに涙が出た。大人の私は、自分ファースト。今だけ・ここだけ・お金だけ、の生き方をしていないかと、反省させられた。