公チャンネル

安岡正篤先生に学ぶ
酔中すいちゅうの言』

 人間の言葉の中で案外確かなものは「酔中の言」
だといわれている。酔えば理性が麻痺するために
本当のことを言う。しかし、それでは余りにも真
実が生々しいから、約束で酔中の言は取り上げぬ
ことにした。古人の粋な計らいではあるが、この
酔態の中によくその人物を見ることができるので
ある。
 酒の飲み方でその人の力量が分かるといわれる。
そう言えば、酒を飲んでも姿が崩れないひともい
れば、醜態をさらす人もいる。
 飲んだから言うのではないが、と前置きしてし
ゃべり出す人がいる。たいていこの場合は、聞い
ていて嬉しいことでも感じのよいことでもない。
説教まがいの話をうだうだとする。
 翌日酔いからさめてこう言う。「いやあ〜 昨
日はご免。つい、飲みすぎて」「酔っていて何を
喋ったかさっぱり覚えていない。記憶が飛んでし
まった」と。
 本当かな、と疑いたくなる。どうも、記憶があ
りそうだ。だいたいが、酒の力を借りて素面では
言えないことを言っているようだ。
 日ごろは自分を押し殺しているための反動か、
と思いたくなる。
 酒は楽しんで味わうものだ。宴席では、お金の
話、政治の話、宗教の話は禁物だ。
 高笑いや意味のない笑いをしないことだ。
 酒を飲むと気が大きくなり、できもしない約束
をしたり、金を散財し、酔いからさめて後悔する。
 酒は美しく楽しく飲むこと。ひとは、決して酒
の席だからといって許してはくれない。むしろ、
本心を語った、と思う。思われたら最後、弁解は
できないと心得よ。