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『認知症』

 人間何十年も生きていると、身体の衰え、
記憶力の衰え等々人間としての機能が加齢と
ともに落ちてゆく。
 もの忘れというのか
 ボケというのか
 ちほう症というのか
 認知症というのか
 呼び名はいろ々あろうが、機能が落ちてゆ
くことに変りはない。
 料理ができなくなった。
 だいじょうぶ、誰れかがつくってくれる。
 曜日がわからなくなった。
 だいじょうぶ、勤めに出るわけではないか
ら。
 昼夜逆転した。
 だいじょうぶ、おきている時が昼、ねてい
る時が夜だから。
 耳の聞こえが悪くなった。
 だいじょうぶ、外の声はたいがいがどうで
もいい、聞くに値しない声だから。
 昔の、若い時の出来ごとを何度もくりかえ
し話す。
 だいじょうぶ、それは想い出深い出来事だ
から。大切に記憶にとどめておこう。
 人間、歳をかさねていくごとに、生きるう
えで本当に必要、大切なもの以外は削ぎ落さ
れ、心は軽く透明になってゆくのではなかろ
うか。
 確かに、まわりの人は大変苦労する。
 親のことだからと、ひと言でかたずけられ
ないと思う。
 認知症の人とのかかわり方に、正解などな
い。理屈だけで語れるものでもない。
 親を含め人生の先輩たちを、私たち後輩が
どのようにサポートしていったらいいのか。
 わからない。
 ただ、母の背中を流しながら、どんな形で
も生きていて欲しいと思った。