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『母というよびな』
 母、母親、御袋おふくろ、ママ、かか御母様おかあさま御母おかあ
さん、かあさん、御母おかあちゃん、おっかあ、母上ははうえ
母君ははぎみ慈母じぼ、こんなに母の呼び名があるのだ。
 私は、お母さんと呼ぶ。
 日本語で母という言葉ほど、優しくて、あ
たたかくて、厳しくて、悲しいものはない。
 母、母ちゃん、お母さん等々、子供に安心
と信頼を与えてくれる日本語はみつからない。
母ちゃん元気でいろよ。母ちゃんは僕そのも
のである。
 仏教者の暁烏敏あけがらすはやさんの詩に、
 十億の人
 十億の母あらむも
 わが母まさる
 波ゝあり奈むや
 がある。自分の母ちゃんが世界で一番とい
うことだ。
 一番の母ちゃんが、歳を重ね、動きものろ
く、台所にもうまく立てなくなった。
 六七才の私は、病院では理事長、職員はそ
れなりにたててくれる。が母だけはいつまで
も子供である。
 私を呼びすてにするのは、母ちゃんと姉ち
ゃん2人とおじさん、おばさんだけ。
 最近の母の手紙は…
「公一、一生のお願いです。酒は二合までに
して下さい。一生のお願いです。」
 母ちゃんのいいつけは、守りたいと思う。
母ちゃん、おっかあ、かか、おかん、なんと
優しく、力強く、厳しく、悲しみのある言葉
だろう。
 日本語で一番人の心を動かすことばそれは
力。
 人に最も優しいことば
 老いた姿を見て悲しくなる言葉
 私にとり、かあちゃんは、宝の言葉である。
かあちゃん、長生きしろよ、と心で祈る。