日本医療評価機構 認定第 JC1979号
公チャンネル

『母の遺言』
 私の母は八十九歳。女学校卒業のお嬢様育
ち。母の父、私の祖父は町の名士であった。
幼少時は、バナナ、パイナップルはどの家で
も食していると思っていたという。
 幼少時のカラー写真がある。といっても、
今様の写真ではなく、カメラマンが色づけし
たものである。そのような母が、私に手紙を
書いた。
「公一、お酒は少しにしてください。お母さ
んの一生のお願いです。これから円香が親を
必要とします。お母さんの一生のお願いです」
 重たい置手紙。八十九歳の母の手紙は、私
にとって遺言に等しい。ずっしりと、受け止
めた。アルコールの量を減らすことにした。
 私は六十五歳。それでも母にとって、子供で
ある。六十五歳の私は、母の前では子供である。