日本医療評価機構 認定第 JC1979号
公チャンネル

『サラとカラ』
 二八年前の日記、といっても、誰れにも読
ませることのできない、胸の内を記した内省
日記である。
 倒産した病院の再建に取組む、まさしくス
タートする私の心の内が記されていた。記さ
れていたというのは、記憶になかったことが
記されていたのだ。
 人間の脳とは不思議なもので、苦しかった
こと、辛いことは記憶になく、快や楽しいこ
としか記憶にないものだ。
 内省日記を読み返し、こんなこと、あんな
ことがあったのかと他人ごとのように記憶を
ひも解いた。
 二八年前は再建に向けて必死だった。やる
かやらないかの選択肢はなかった。ゆえに迷
いはなかった。やるんだという一本の道を歩
むしかなかった。引き返す道は断れていた。
ストレスもなかった。夢があった。いい病院
だねと働く人も地域の人も、いってくれる病
院にしたくて無我夢中だった。
 あれから二八年。
 今からふたたび、いい病院づくりに向って
歩くのか、それとも、今さら何いってるのと
退くのか。
 あきた病院が私を求めているのか、必要と
しているのか。エゴと向き合い自問自答して
いる。齢い六五才。今から、今さら。
 二八年前に立てた志。
 雇用をまもる。金融機関と対等につきあえ
る。納税する。以上3本の柱。
 今日只今までまもり通している。だが、明
日朝、目が覚めた時、雇用をまもれないので
はと、心が萎える。職員の才能を引き出すこ
とができないと私の心は痛む。
 先代の声が、父の声が聴こえてくる。
 今……だと。