日本医療評価機構 認定第 JC1979号
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『退くことの難しさ』
 何ごとにも初めあり、始まりあり。
 何ごとにも終りある。
 始めるより終る時、進むより退く時が難し
いように思う。特に一所懸命に誠実に事に向
き合ってきた分だけ、事に愛着があり、未練
がある。これが執着となり、終りの時退く時
のタイミングを逸してしまう。
 進む時は多くの人の助けや導きによるとこ
ろが大であるが、終る時退く時は誰れにも相
談することなく、自己と対話をしながら決し
なければならない。
 自己の中にいるもう一人の自分との対話。
内なる声に心耳を傾け表面意識の自己との会
話である。何時間も何日も自己との会話を続
けていく。
 今、終るのか、退くのか。もう少しあとで
もいいのではないか。
 そもそも、何故終る。何故退く。
 お前さん、本当のところどうしたいのか。
四の五のいわずに、ひと言で云え。
 それが本当の心の底からでてくるお前さん
の本心なのか。
さぁ、いってみろ。
 こうやって何時間も何日も自己と自己の対
話が続く。一本のロウソクの炎のように右に
左に心はゆれる。蝋が燃え尽きてなくなるま
で、いや、ロウソクの炎が消えた後まで、私
の心に炎は残り続けるだろう。
 ロウソクの炎のゆれを静かにみつめ続ける
以外に心を落ち着かせることはできないと思
う。
 どんな心の置所で、終りの時、退く時を決
断したかが大切なことではなかろうか。決断
について、それがよかった、といえるギリギ
リのところではないだろうか。
 仕事に一所懸命、生きるに一所懸命である
深さが深いほど、自己と自己の対話は長くな
るのだろう。今日も、対話を始めよう。無色
透明な世界に入ってゆこう。